世界の金融史: キング・オブ・ウォールストリート のポール・チューダー・ジョーンズ2世

金融の世界史には多くの出来事がたくさんありました。そして、すべての成功や失敗の裏には重要人物がいます。そのうちの1人がアメリカのトレーダーで投資家、そして、世界的にも最も成功したヘッジファンドの一つである: チューダー・インベストメント・コーポレーションの設立者であるポール・チューダー・ジョーンズです。

長い道のりのはじまり

ポール・チューダー・ジョーンズ(PTJ)は、1954年9月28日、アメリカ合衆国のテネシー州メンフィスで誕生しました。地元の小学校と大学を卒業後、バージニア大学で経済学の学位を取得しました。1976年、ニューヨークのE.F.ハットンの入社時は事務員でしたが、すぐに才能を発揮して株式市場アナリストとなり、瞬く間に社内の凄腕トレーダーの1人となりました。E.F.ハットンで数年間、企業の財務諸表や銘柄選択 の経験を積んだ後、先物取引のコモディティーズ・コーポレーション(CC)に転職しました。

1980年の26歳の時に、自身の投資顧問会社を始めることを決意し、チューダー・インベストメント・コーポレーションを設立しました。この若い投資家は、今までに稼いだお金をすべて投資して少額資金から始めました。その一方で、友人や知人を頼って集客し、才能とリスクをとることで資金を増やしました。また、ハーバード・ビジネス・スクールに入学しますが、すぐに学校の授業は自分が学びたい知識と違うことに気がつきました。

ビジネススクールでの授業ではなく、株の仕事を長年従事していた叔父の助けを借りて実践的な取引に明け暮れました。

How Do You Make Trading Profitable_jp

チューダー・インベストメント・コーポレーションの設立から5年間の年間収益率は、100%を超えていました。ポール・チューダー・ジョーンズの最初の成功は、1985年の穀物取引で2000万ドル以上を稼いだことでした。翌年の1986は、92.2%のリターンで業績不振として評価されました。

世間的で知られるようになったのは1987年10月です。ブラックマンデーと呼ばれるこの日にアメリカの株式市場は最も大きな暴落となり、株式指数 が全世界で下落しました。チューダーはこれを事前に予測し、状況を上手く利用して1億ドルを稼ぎ、資金を3倍に増やしました。そして、その1年後は、チューダー・インベストメントに投資した1ドルが投資家に17倍もの利益をもたらしたのです。また、日本市場の下落で大きな利益を生み出した1990年も成功した年でした。

成功要因

チューター・ジョーンズの成功の秘訣の一つは、市場の動きを予測して資産の売買について効果的に意思決定する市場分析能力です。テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の両方で市場の状況を分析するのがPTJのアプローチです。

PTJ は、リスク計算とリスク管理戦略が優れている事でも知られていました。損切り、ポートフォリオの分散、各取引の許容サイズの設定で潜在的リスクを減らすためにいろいろな方法を利用しました。

もう一つの成功の秘訣は、市場状況の変化に対応できるPTJの能力です。政治経済情勢の変化や市場のテクニカルパラメータの変化を素早くキャッチして取引戦略 に組み入れ、ヘッジファンドで利益を出してきました。

取引戦略

PTJの取引戦略は市場の状況で変わります。テクニカル分析やファンダメンタルズ分析に基づくもの、統計分析や数学的モデルに基づくもの、すべてを組み合わせたものなどいろいろです。

最も有名な一つが、"短期取引"で通常は数日以内でおこなう短期の売買です。この戦略は、市場のテクニカルパラメータ分析に基づき、流動性が高く、そして、資本回転が速いために収益となりました。

もう一つのPTJの戦略は"マクロ取引" 戦略です。インフレ、利上げ、経済成長などのマクロ経済のパラメータで市場の方向性を見極めるものです。この戦略はファンダメンタル分析に基づくもので市場の長期トレンドから利益を出しています。

逸話:1987年に取引の秘訣を語っているポール・チューダー・ジョーンズについてのドキュメンタリー映画が作成されました。しかし、1990年以降、PTJはこのドキュメンタリーの上映停止やコピーの購入ですら積極的に取り組みはじめました。理由については諸説あります。その一つがPTJの取引方法が市場操作の一歩手前のため公表しないと決めたということです。

別の逸話: 1994年、ポールは米国証券取引委員会(SEC)に証券取引法違反で$800,000 (当時、2番目に大きい金額) の罰金を支払い和解しています。なお、同氏は容認も否認もしていません。

10のPTJルール

1. まず、資金を減らさず、収益だけを出す

2. 感情を抑える

3. 取引ではなく、市場に注目する

4. リスク回避を身につける

5.損失はつきもの

6. ピボットポイントを見つける

7. 理論より経験や実践が大事

8. 評判の良い投資家を見つけ、観察して結論を導く

9. 市場の"読み" を学ぶ

10. 弱いポジションにしがみつかない

170億ドルの成果

ポール・チューダー・ジョーンズは金融市場で成功を収め、世界的にも成功したヘッジファンドの一つを設立し、巨額の資金を集め、投資家に数十億の利益をもたらしました。ただ、PTJのキャリアに挫折や苦難がなかったわけではありません。2008年の金融危機ではファンド資金のほとんどを失うといった深刻な事態に陥りました。しかし、困難な状況でもファンドを再建して投資家のために利益をもたらしました。

現在のチューダー・インベストメント・コーポレーションは、35カ国の投資家が約120億ドル(2022年時点)の資産を投資運用する世界最大級のヘッジファンドです。また、PTJの個人資産はさらに50億ドルとなります。ポール・チューダー・ジョーンズは、金融業界で最も尊敬される影響力の強いトレーダーの一人としてその成功は世界金融史で称えられています。

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