EUR/USD:弱い強気筋 vs.弱い弱気筋
● 先週の EUR/USD は狭い取引幅でした。ユーロに有利なニュースが1.0865のレジスタンスに押し上げる一方で、ドルの好材料が 1.0800のサポートレベルまで戻しました。しかし、強気筋も弱気筋もこれらのラインを突破するまでには及びませんでした。
●2月28日(水)に発表された米国の2023年第4四半期GDP速報値は、予測の3.3%と前回4.9%に対して下回り、3.2%でドルを押し下げました。しかし、翌日にはドルは下げ幅を取り戻しました。この反発には、連邦準備制度理事会によるインフレ水準の計算や今後の措置を決定する重要な要因である米国の個人消費支出(PCE)の物価指数に関係があります。
2月29日に発表された米経済分析局の報告によると、変動の激しい食品とエネルギ価格を除いた1月のコアPCEは前年同月比2.8%でした。これは、前回の2.9% をやや下回りましたが、まさにアナリストの予想どおりでした。月ベースでのPCEは 0.1%から0.4%に上昇しました。市場関係者は、消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)のインフレ率が予想を上回ったことをすぐに思い出しました。これにより、GDPの減少にもかかわらず、FRBによる金融緩和の開始が引き続き延長されることを確信しました (現在、市場はFRBが6月に利下げサイクルに踏み切ると予想)。
PCEの発表後、米国連邦準備制度理事会のハト派的発言がドルを支えました。サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁は、早すぎる利下げがインフレ不況を招く恐れがあると述べました。また、デイリー総裁の同僚のアトランタ連銀ラファエル・ボスティック総裁は夏に利下げを開始することが適切だと提案しています。
● ユーロ売りもユーロ圏の弱い統計に影響されており、1月の消費者貸付額は2016年1月以来の低い伸び率でした。この指標では、わずか0.3%の伸び率でした。アナリストはこの傾向の主な理由として、欧州中央銀行(ECB)の高金利が消費者の圧力を挙げており、これも利下げ根拠となる可能性があります。
消費者インフレに関するユーロ圏内の数字にはばらつきがありました。スペインとフランスで先週の初めに発表されたデータは予想を上回りました。一方、ドイツのCPI は前年比3.1%から2.7%に下がり、予想どおりでした。EUR/USD の推移は、春一番に発表されたユーロ圏全体の数字に影響されています。ユーロ統計局の速報によると、2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.6%上昇、1月の2.8%よりは下回っていましたが、予想の2.5%を上回りました。同月のコアインフレーションは、前年同月比3.1%で、前回の3.3%から下がりましたが、予想の2.9%を超えました。インフレーションは、年間ベースでは低下しましたが、月ベースでは、マイナス. -0.4% から+0.6%へと上昇しています。
●週の取引最終日に、米国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の最終値が発表されて市場関係者をやや落胆させました。2月のPMIは、予想の49.5ポイントに対して49.1 から47.8ポイントへ下落しました。このため、1.0800の下値支持線から反発した EUR/USD は、再び上昇して週の終値は1.0839となりました。直近予想では、3月1日(金)の夕方、45%のアナリストがドル高でこのペアの下落予想です。30% がユーロ支持ですが、25%が中立の立場です。D1のオシレーター系では、赤は20%のみで、別の20%がグレーで残り 60%が緑で10%が買われ過ぎ圏内です。トレンド系では次のとおり: 20%が赤、80%が緑です。 このペアの直近のサポートレベルは、1.0800に続いて、 1.0725-1.0740、1.0680-1.0695、1.0620、1.0495-1.0515、 1.0450です。レジスタンスは、1.0845-1.0865、1.0925、1.0985-1.1015、1.1050、1.1110-1.1140、1.1230-1.1275です。
● 今週に関しては、3月5日(火)に米国のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)の発表があります。水曜日と木曜日には、米国の労働市場からまとまった労働市場データがあり、同日に連邦準備制度理事会のパウエル議長の議会での発言が予定されています。今週のメインイベントは、3月7日(木)にある欧州中央銀行(ECB)理事会です。市場関係者は、ECBが金利を4.50%に据え置くと予想しているため、理事会後のECB総裁の記者会見に注目しています。週終わりは、かなり不安定になる可能性があります。3月8日(金)は、まずユーロ圏の2023年第4四半期のGDPデータ続き、失業率、平均賃金水準、非農業部門新規雇用者数(Non-Farm Payrolls, NFP)を含む非常に重要な統計があります。
GBP/USD:予算がポンドの支えになるか?
● 欧州中央銀行(ECB)理事会を数日後に控えていますが、連邦準備制度理事会(FRB)とイングランド銀行(BOE)の理事会は、しばらく予定されていません: 各3月20日と21日。今週のポンドに関する直近の重要なイベンドは、3月6日(水)のイギリス政府による予算発表です。オランダのラボバンクのストラテジストによれば、この予算は選挙前のものであるため、G10 で米国に次いで2024年の成功している通貨であるポンドにかなり影響します。
現在のルールによれば、イギリスの総選挙は遅くとも2025年1月28日までに実施されなければなりません。ガーディアン紙によると、リシ・スナック首相は総選挙を2024年後半に実施する方向に傾いています。ただ、テレグラフ紙は、英国議会の下院選挙はさらに早く、早ければ今春にも行われる可能性があると報じています。
●ラボバンクのエコノミストは、選挙前の予算には財政的インセンティブが盛り込まれ、ポンド高への新たな刺激材料となると予想しています。これには、適度な金融緩和政策が盛り込まれており、所得税よりも国民保険の変更を伴う可能性が大きいようです。労働意欲を高められそうな可能性や投資意欲を高めることができそうな規制変更は、特に市場の関心を集めます。労働力人口の増加は経済成長につながるため、ポンドにとって好材料となります。
ラボバンクも日本のMUFG銀行のいずれも金融刺激策の及ぶ範囲がイギリス経済の指標を大幅に改善させるには不十分だとした見方です。しかし、刺激策の範囲が小さいものであったとしても、イングランド銀行が早急な利下をすることはなく、5月、6月も利下げをしないだろうとした一般的な意見が強まるでしょう。
● イングランド銀行(BOE)は2月1日の金融政策決定会合で、金利を従来の5.25%に据え置くことにしたことを思い出してみましょう。これに伴う発言では、"利下げ前に消費者物価指数が2.0%に下がり、この水準を維持できる証拠がさらに必要である"ということでした。 市場関係者は、8月に利下げに踏み切る見通しです。この見通しは既に相場に盛り込まれており、GBP/USD の下落を防いでいます。
しかし、2月のインフレ率が4.0%のままで、国内GDPが-0.3%減となれば、政府は新たな刺激で経済を強化させようとするようです。それにもかかわらず、これらの措置がGDPの成長につながらない場合、差し迫った利下げの議論が再開され、ポンドに圧力をかけるかもしれません。
● GBP/USD の先週の終値は1.2652で1.2600-1.2800の中期の横ばい圏内から抜け出せないでいます。直近のアナリスト予想では、ちょうど等しく意見が分かれています: 3分の1がこのペアの下落、3分の1が上昇、3分の1が中立の立場です。D1のオシレーター系では、25% が下落、40%が上昇、残り 35% が横ばいです。トレンド系では、1週間前と同様に、ポンドがかなり支持されており、80%が上昇、 20%が下落を示しています。 このペアが下落すれば、サポートレベルは1.2575-1.2600、1.2500-1.2535、1.2450、1.2375、 1.2330になります。上昇すれば、レジスタンスは1.2695-1.2710、1.2785-1.2815、1.2880、1.2940、1.3000、1.3140です。
● 今週は3月6日の国内予算の発表を除いたイギリス経済に関する重要なマクロ経済統計の発表予定はありません。
USD/JPY: 花占い
● 昔から花占いといった方法があります。女の子が花びらを1枚ずつ摘んでいきます: 1枚目が好き、2枚目が嫌い、3枚目が好き、4枚目が嫌いといったように、花びらがなくなるまで続けます。最後の花びらが現実になると信じられています。この占いが日本銀行(日銀)にも当てはめることができます: 金融政策の変更をする、しない、する...
低金利が円安をもたらすことで輸出を促し、海外市場で日本製品の競争力を高めることになります。しかし、その反面、輸入品、主に原材料やエネルギー資源の輸入品の価格が高くなるため、国内産業にとって問題が生じます。
1月の貿易収支は大幅赤字となりました。12月の収支で輸入(+690億円)はプラスでしたが、1月はマイナス1758億円までの崩壊でした。2023年の収支を見ると、輸入が輸出より大きくなることが度々あります。1月の鉱工業生産はマイナス-7.5%で、前回の+1.4%と予想の -6.7%よりも悪化しました。つまり、花占いのように、日本の規制当局は、経済を支えることとインフレ抑制のどちらの方がいいのか、より重要なのかと考えています。また、日銀は具体的な措置はせず、曖昧な発言で、しばしば、非常に矛盾しています。
● 2月29日、日本銀行(日銀)の高田創理事のタカ派的な発言により、日本国債の利回りは0.68%から 0.71%に上昇して、USD/JPY は、150.14 から149.20へ下落しました。高田理事の日銀は金融緩和政策の脱却を含めた柔軟な対応策を検討すべきという発言により、投資家は利上げシグナルと解釈しました。
しかし、そのわずか1日後、日本銀行の植田和男総裁は、国内経済が徐々に回復しており、第4四半期のGDPの減少は、新型コロナウイルスのパンデミック後に再スタートした強い経済成長の多少の調整であると発言しました。植田総裁によれば、利上げせずともインフレは予想よりも早いペースで低下しています。その後、USD/JPY は反発して150.70まで上昇しました。
● 現在の円の主なプラス材料は、G10の主要中央銀行が緩和政策を検討している中、日本銀行は引き締め策だけを検討していることです。すでにマイナス0.10%となっている金利を引き下げないことは明らかです。コメルツ銀行は、すぐに日銀が近く金融政策の正常化に向けて踏み出す可能性を排除していません。"しかし、当然ながらこれは制限的である" と同銀行のエコノミストは著しています。" 2000年と2006年のように、最初の利上げはインフレ率を鈍化させるだろう。その後のさらなる正常化はないだろう" 。このことから、コメルツ銀行の予想では、USD/JPY が今年の12月までに徐々に142.00まで下落、 その後は2025年末までに146.00 への着実な上昇です。
● 先週は、米国の製造部門の弱いPMIの発表を受け、150.10が終値でした。アナリストの中央値予想を見てみると、60%がUSD/JPYの弱気、20%が強気、残り20% が予想を控えています。D1のオシレーター系では、 65%が緑(このうち10% が買われ過ぎ圏内)、残り35%がグレーです。 同じく、トレンド系の65%が緑で、35%が赤です。直近のサポートレベルは、 149.60、これに続き、149.20、148.25-148.40、147.65、146.65-146.85、144.90-145.30、143.40-143.75、142.20、140.25-140.60となります。レジデンスレベルは、. 150.90、151.70-152.05、153.15です。
● 今週の予定では、3月5日(火)の東京都区部消費者物価指数(CPI)の発表が注目されます。そのほかの日本経済に関する重要なイベントは予定されていません。
暗号資産: "裸の王様"の新記録
● 先週のビットコインは多くの国の現地通貨に対して史上高値をつけました。現在、ビットコインは2021年11月10日の史上最高値$68,917向けて突破しようとしています。少なくても、現在の推移ではこのゴールに向かっています。2月26日(月)に$50,894で始まったBTC/USD は、水曜日には$63,925 となり、わずか3日間で25%以上も大幅に上昇しました。この時点のビットコインのFear & Greed 指数は、 82 ポイントに上昇して、非常に貪欲圏内です。シティ・インデックスのシニアマーケットアナリスト、マット・シンプソン氏は、"これがほかの市場であれば、'過熱のピーク– バブルから離れろ' ということにおそらくなる。しかし、ビットコインはパラボリックな上昇局面に入り、すぐには高値の兆しがみられない"と著しています。
● 2月1日のBTCは、 $41,877での取引でした。つまり、29日間で約50%以上の上昇、この2月は投資家にとって過去3年間で最も成功した月となりました。前回のレビューで、現在進行中の強気相場の5つの要因を最も重要なものからそうでないものまで紹介しました。ビットコインのスポットETFへの大規模な投資は、ビットコインへの大きな需要のきっかけとなりました。しかし、JPモルガンが示しているとおり、比較的少額の個人暗号資産投資家による購入が現時点では大企業のキャッシュフローを上回っています。
グラスノードのアナリストは、現在の状況が2020–2021年に見られたブームに似ているとした見解です。資金の流れの推移、取引活動、暗号資産デリバティブのレバレッジ、機関投資家と個人投機家の両方からの需要のすべてが、 投資家のリスク選好の急増を示しています。ビットコインの先物の総建玉残高 (OI) は、210億ドルに達して2021年の高揚感にも近づいています。取引日の7%だけがOI値を上回りました。ビットコインの大幅な売りがさらなる引き金ともなりました。
●ハイゼンベルグ・キャピタルの創設者でカイザー・レポートの司会者でもある投資家マックス・カイザー氏は、ビットコインと1985年3月に1株$1,500の価格で販売されていたウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイ株の購入と比較しました。その後、これらの株価は$629,000に上昇しました。カイザー氏によれば、ビットコインは41,000%以上に上昇する可能性があります。暗号資産の代表格であるビットコインがこれほど急騰すれば、1コインあたり、$21,000,000の上昇となり、暗号資産市場の時価総額は450兆ドルを超えることになります(比較のため、Apple Incの現在の時価総額は 2 兆 8,200 億ドル、これに続き、マイクロソフトが 2 兆ドル、アルファベットが 1 兆 7,700 億ドル、アマゾンが 1 兆 6,000 億ドルとなります)。
さらに、マックス・カイザーはトレーダーや投資家に向けて、米国株式市場の大暴落の可能性を警告しました。同氏は、"1987年のような暴落がやってくる。ビットコインは、完璧な安全資産であり、$500,000を超えて急騰するだろう" と述べています。注目すべきは、ビットコインが株式などのリスク資産から完全に"切り離されている"ことであり、 S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダックなどの株価指数との相関性が事実上ゼロになりました。
● 2月27日にBTC/USD が $56,000 水準を突破した後、伝説的なトレーダー、アナリスト、ファクターLLCの代表であるピーター・ブラント氏は、2025年のビットコイン相場の自信の予想を$120,000から$200,000へ修正しました。同氏は、ビットコインが15ヵ月の取引幅(BTC/USD チャートで2022年11月と2023年9月の安値、2023年4月と2024年1月の高値を結ぶトレンドライン)での上値抵抗線を突破したので上方修正しました。ブラントによると、現在の強気サイクルは2025年8月から9月に終了です。その頃までに、ビットコイン相場はゴールに達しているはずとのことです。
このポジションからの撤退ポイントとして、ブラント氏は半分ジョーダンで、2021年とおなじように"逆張り指標" としてXネットワークでのレーザーアイを利用すると述べています。"だから、皆さん" 、"ビットコインの強気トレンドを維持したいなら、ソーシャルメディアのプロフィール写真にレーザーアイを使わないでください。レザーアイが多すぎることは売りシグナルである"と強く呼びかけています。
同様の数字をChatGPT-4も示しています。人工知能によれば、2025年8月までにBTC相場は、 $179,000 になる見込みです。しかし、ChatGPT-4は、正確な予想が困難だと認識しており、"計算が推測であり、予想外の経済、規制、技術的要因によって左右される"と警告しています。
● 今年、2024年についてですが、ビットコインは今後10ヵ月で$150,000を達成できるかもしれません。この意見は、分析会社ファンドストラットの共同創設者であるトム・リー氏がCNBCとのインタビューで述べたものです。"ETFは需要を増加させ、半減が供給を減少させ、予想している金融緩和策のすべてがリスク資産やビットコインを支える" とリー氏は説明しています。同時に、同氏は近い将来の暗号資産市場に期待すべきではないとした見方です。長期的な見通しでは、1月に発表した5年以内にビットコインが$500,000 を達成するとした予想を繰り返しています。"安全なお金であり、実用性が認められています。すばらしい価値の貯蔵、優れたリスク資産であり、信じられないほど安全でもある" とファンドストラットの共同創設者は付け加えました。
● このレビューを執筆している3月1日(金)の夕方、BTC/USD は$62,500付近で取引されています。暗号資産市場の時価総額は、 2兆ドルという重要な基準を超え、2兆3400億ドルに達しました (1週間前の1兆9500億ドルから上昇)。Crypto Fear & Greed指数は、 76 から80ポイントに上昇して非常に貪欲の圏内です。
●最後に、全体として喜びの中に懸念が舞い込んできました。 多くのビットコイン愛好家とは反対に、欧州中央銀行の専門家はBTCの適正価値は... ゼロとした見方をしています。それも、米国でビットコインのETFが承認され、現在は相場が上昇しているにもかかわらずです。
2022年11月のECBの専門家は、"ビットコインの最後の抵抗"という記事を発表しました。そこでは、"最終的に無価値となっていく前の人為的な最後のあがき"と呼んでいます。それから、ビットコインの相場は~$17,000から ~$60,000へと上昇しました。しかし、これによって銀行の専門家の意見は変わることはありません。"ETF 承認- 裸の王様に新しい服"という新たなエッセイでは、1年前以上の主な議論での自分たちの意見が正しかったとあります。まず、ビットコインは世界的な分散型決済デジタル通貨にならなかったこと。次に、ビットコインが必ず上昇する安定した投資資産にならなかったことです。
"ビットコインはまだ投資として適していない" とエッセイにはあります。" (不動産のような)キャッシュフローや(株のような)配当があるわけでもなく、 (コモディティのように)生産的利用ができるわけでもなく、(ゴールドジュエリーのように)社交的な利用価値もなく、 (芸術作品のように)の素晴らしい才能による主観的価値を提供するわけでもない" というのがECB の見方です。もし、例えば、マックス・カイザーの予想が的中して、 "裸の王様"が2100万ドルになった時の専門家の説明は興味深いものになるでしょう。
NordFX Analytical Group
注意: この内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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